楡林→西安7005次

[yz31]

8月23日，陝西省北部の楡林から西安に向かう普通列車7005に乗車しました。中国の普通列車でメジャーな「朝出ておよそ10時間かけて夜着く」タイプの，典型的なれっしゃです。特筆するべきことは，やはり，全国版時刻表に掲載されている停車駅は実際の半分もないことです。全国版時刻表には，始発･終着駅含めて16の駅しか掲載がありませんが，実際には，37の駅に停車していました。停留所1つ含む。時刻表を見ていると，最近は普通列車が激減しただけでなく，停車駅も減ってきており，いよいよつまらなくなったなと感じてしまうことも多々ありますが，｢乗ってみないとわからない｣という楽しみはまだ健在であることに安心します。通勤列車化され，時刻表からは姿を消したものの未だ運転されている列車も多数有るようですし。

前日夜に夜行で西安を出発し，当日朝に楡林入り。すぐに7005に乗車して｢とんぼ返り｣です。西安駅の切符売り場の窓口氏にはたいへん変な顔をされましたが。
楡林からは8時15分に発車。編成は，DF4B＋9YZ25B＋YW25B＋CA25Bの全12両。塗装は，西延公司オリジナル色（緑じゃないと雰囲気でないな~）。車両には，2006年北車製造のプレートが。わたしが数年前にこの列車を見たときは22だったので，その後，自社発注車で車両を更新したようです。最近も25Bの製造が行われているといいますが，こういう車両のことをいうのでしょうね。非空調車両としては珍しいパターンだと思います。
乗客は楡林からは300名程度。西安まで乗り通す客が多いことに驚きました。楡林から西安へ向かう客は前3両に詰め込まれたので前3両は満員。自分は無座券だったので，体の置き所に困り，車内で寝台券を買って早々9号車に転戦しました。後から混雑はさらに激しくなってきたので，結果的にもよい選択でした。
途中駅からはどんどん人が乗ってきます。沿線の安くて早い交通機関として定着しているようです。とくに，貴重な昼行列車として選択されているようでした。乗客の入れ替わりは激しいですが，概して西安に向かう人が多く，もっとも混雑したのは西安到着前でした。特に，この時期ゆえ，学生客が多かったです。乗り合わせたおじさんによると，普段は座席が埋まるくらいの混み具合だそうです。ちなみに，楡林から西安まで学生きっぷだと18元。激安ですね。並行バスは128元なので列車がたとえ遅くても大人気なのに納得です。
路線については，最近の発展もあり，たいへんユニークなので，次のレスで。

1枚目　楡林駅に停車中
2枚目　延安北駅の貨物扱い線で見かけた「守車」（車掌車）。中国の鉄道は人をとにかくたくさん使うのに，貨物列車の車掌車だけは早々と廃止したのが不思議です。貨車の信頼性にそれだけの自身があるのかな。
3枚目　車内にぶら下げられていた時刻表。37個の停車駅が書いてあります。
4枚目　途中駅で姉妹列車とすれ違います。

[yz31]

5枚目　旧線区間（後述）の荒廃した駅。駅舎は稼働部分が縮小しもてあましており，駅員宿舎はうち捨てられています。過去の栄光がしのばれます。
6枚目　韓家園駅構内にて。みなさんこれはなんだと思われますか。レールバスの後ろ，木造の窓のある短い車両。
7枚目　大勢の人が乗り降りします。蘇家坂駅。

[yz31]

路線について

この列車のはしる路線は，包西線にいまは属していますが，いろいろと複雑な発展を遂げてきました。

1970年代に，地方と中央の合弁鉄道として西延線が着工。西安から延安まで到達します。そのご，1990年代に延安からさらに北の神木までいたり，楡林はその途中駅となります。このころには，すでに包西線という構想があったのか，包頭から神木までの路線も建設され，なんとか包頭から西安までが1本のレールでつながるようになります。しかし，包西線として一体運営され，直達列車が走るようになるのは，およそ10年後の2010年のことです。実に長い年月がかかって，この構想が実現していることがわかります。

じつは，これだけではありません。わたしは，もともと，包西線という構想を聞いて，非現実的だと思ってきました。途中の西延線があまりにも貧弱なローカル線であることを知っていたからです。ところが，2011年7月号の時刻表を見て，延安行きの列車の停車駅が耳慣れない「富県東」「黄陵東」となっているのを見て，「もしや新線を建設したか?」と気づいたのです。下図を見てください。西延線の着工から包西線の実現までには，多大な年月がかかったため，この間の技術の進歩を反映して，もはや1本の路線としてそのままつなぐには難のある状態だったのを改善するために，線形改良と新線建設，電化をほんの数年で行っていたのです。緑の線が2000年までに完成した線路。赤の線が，その後新しく建設された線路です。

楡林-延安間
　2000年以前に一度完成したさいには，比較的新しい路線で，トンネルと高架を駆使しており，線形は良好。単線非電化。
　2000年以降は，複線化と，部分的にカーブがきつかった区間を新たにトンネルと高架で改良。電化。
延安-甘泉北間
　1970年代に建設された老朽路線。線路規格は低く，2線駅も多数。典型的な昔ながらの中国のローカル線。昨年レポートした前河鎮に行く路線と大差なし。｢支線｣という雰囲気。線形悪。単線。非電化。
　2000年以降は，思い切って，複線電化の新線を建設。旧線とは甘泉北で接続。旧線は廃線。
甘泉北-鐘家村間
　1970年代に建設された老朽路線。線路規格は低く，2線駅も多数。典型的な昔ながらの中国のローカル線。昨年レポートした前河鎮に行く路線と大差なし。｢支線｣という雰囲気。線形悪。単線。非電化。
　2000年以降は，思い切って，複線電化の新線を建設。旧線とは甘泉北で接続。旧線も存置。旧線は1往復の普通列車とおそらく10往復程度の運炭列車が運転。一時は陝西省北部の動脈だっただけに駅施設は幹線級だが，それら施設の放棄が進んでいる。ただ，途中新線と離れている部分が100キロ以上あること，保線自体はかなり力を入れて行っていること，西延鉄道公司（陝西省内の優良企業だ）の創業路線であり創業精神の場であること等から考えると，廃線となる可能性は低いのではないか。

1枚目　イメージ図
2枚目　線路改良で放棄された路盤が始終目に入る
3枚目　新線から見る旧線跡（甘泉北）（矢印）
4枚目　旧線から見る新線

[Pアノンゴ]

yz31様

またまた奥深き路線のレポート、
楡林ってどこ？と横にグーグルマップを開いて
興味深く拝見させてもらいました。
けなげに旧線を走るなんて
Ｂ級列車の醍醐味ですね。

日本のグリーン車みたいな扱いでYW25B、
そしてなんと食堂車まで連結されているんですね。
こんなローカル列車でどんな食事が提供されるのか、
とても興味深いです。
（乗務員の食事と、お弁当のため？）

[Borgen]

なかなか興味深いレポートを拝見させていただきました。

包頭〜西安はいずれは乗車したい区間です。
一部の特快列車やZ列車が綏徳から西安まで経由するため、線形が改良されているのですね。

どうせなら呼和浩特から乗車して、延安〜西安間の区間をしっかり見ておきたいです。
最近は満足いく乗り鉄してないからなおさらです。